■夏の贈り物■【サリエル×ゼルク】
「AngelSyndrome」 「おい、ゼルク! いいものやろうか」 放課後、サリエルにそう声をかけられるがあんまりいい予感はしない。 なんだかサリエルの顔がにやついている。 「……いいものって、本当にいいもの?」 「疑ってんのかよ」 「うん」 「あー、じゃあ期待に応えて、本当は良くないもんでもやろうかな」 キラリとサリエルの手に持つ剣が光る。 「あぁもう、やだってば、それ!」 慌てて俺は、数歩後ろへと逃げる。 「いい加減慣れろって」 「いい加減、剣で遊ぶのやめろ!」 「ゼルクがそういう反応する限りはやめらんねぇな」 これはもう完全にからかわれている。 くそう。 「もういい。帰る」 「待てって。こっち来いよ」 そう言い、サリエルは俺の手を引く。 「もー……」 あいかわらず強引だ。 強引に俺の手を引いて、結局連れて来られたのはサリエルの部屋だった。 サリエルは、部屋の隅にある冷凍庫からなにかを取りだす。 「ほら、アイスキャンディ」 「アイスキャンディ?」 「どうせ食べたことないだろ、ゼルク」 「……サリエル、もしかしてまた人間界から盗んで来たのかよ」 「人聞き悪いな。貰って来たんだよ」 サリエルはたまに人間界に行ってはなにかしらこっそり物を取って来る。 本当はそんなことをしてはいけないとは思うけど、人間界の食べ物はかなり特殊で美味しいものが多い。 前にサリエルがくれた飴もすごくおいしかった。 「……それ、もしかしてくれるの?」 「やろうと思ってたけど、どうしようか」 素直に欲しいとはなんだか言いたくない。 どうにも、俺はサリエルに甘えるのが苦手だ。 恥ずかしい。 別にアイスを欲しがるくらい甘えではないかもしれないけれど。 「ゼルクはそんなに欲しくないみたいだし、他のやつにでもやるかな」 「なっ……そ、それなりには欲しいかも」 サリエルは、勝ち誇ったようにふっと笑う。 悔しいけれど、もうこの際アイスさえもらえればどうでもいい。 ビニールの袋を外し、棒についたアイスをサリエルが俺の口元へと差し出してくれる。 「ほら、ちんこしゃぶるみたいにして喰うんだぞ」 「な……なんでそう下品なこと言うんだよ」 「んー、下品とかじゃなくて、ゼルクが一番わかりやすい表現にしてやってるだけだろ」 「わかりやすくねぇっての」 「昨日も散々、俺のしゃぶったのに?」 「ち、違う」 「なに堂々と嘘ついてんだか。俺のちんこで口ん中擦られてあんあんよがってたくせに」 「よがってない!」 「いいぜ? ゼルクがアイスでよがっても俺は気にしない」 「よがるわけないだろ」 なんたって、相手はアイスだ。 サリエルに頬を掴まれ、アイスで口を割り開かれる。 無理やり入れられるのはなんだかしゃくだけど、とりあえず匂いに釣られるよう俺はアイスを口内に含んだ。 「ん……」 甘い。 とてつもなく甘くて、つい顔がほころんでしまう。 「んっ……」 少し歯を立てると冷たくて、慌てて俺は大きく口を開く。 「歯立てんなって。舌絡めて舐めて味わうんだよ」 「うん……」 言われたように舌を絡めると、俺より冷たいアイスが溶け出す。 俺はそれをしゃるぶようコクリと蜜を飲み込んだ。 「ん……あっ」 「んー、どうした?」 サリエルは、一旦、俺からアイスを引き抜いてくれる。 「なんか……変な感じする」 「甘くておいしいだろ」 「おいしいけど……」 サリエルは、体勢を変え後ろから俺の体を抱く。 抱きしめたままもう一度、俺の口元へとアイスを差し出した。 「ほら、もう一度、咥えてみろよ」 今度は耳元で囁いて、また俺の口内にアイスを差し込む。 「んっ……」 甘くておいしくて、俺は何度も溶けだす蜜を飲みこんでいく。 サリエルはアイスを入れたり抜いたりして、俺の舌に擦りつけて来る。 「ん……はぁっ」 なんだか熱いと気付いた頃にはもう遅かった。 俺の体を抱くサリエルの手が、容赦なく股間を撫で回す。 「なぁっ……」 「ほら……舌擦られんの好きだろ、ゼルク」 器用に俺の舌をアイスで撫でながら、ズボンのチャックを下ろす。 「やめっ……ぅあっ」 俺は慌てて、サリエルの両方の手を掴む。 アイスを抜き取ることには成功したが、直接取りだされた自分のモノを撫でられることは避けられなかった。 「ぁっ……んぅっ!」 「たまには変わった嗜好のプレイすんのもいいな」 「逆だろ。たまには普通のことするとかないのかよ」 サリエルの行為はいつもおかしい。 ……たぶん。 俺だって、そんな知識があるわけじゃないけれど、こう体を切って傷口に精液をかけて喜ぶなんてたぶんサリエルくらいだ。 いろいろと反論したいのに、少しだけ頭がぼんやりしてしまう。 「ん……んぅ、サリエル……」 「んー、どうした?」 「喉……熱い」 「だろうな」 サリエルが耳元でくすくす笑う。 もう一度、口に溶けかけたアイスを突っ込まれ、コクリと溢れた蜜を飲み込む。 冷たいのに熱くて、矛盾していて。 理解出来ないけれど、喉が熱いのはアイスのせいだとわかった。 喉だけじゃない。 なんだか、体がぽかぽかする。 「サリエル……なに……これ」 体の不調は、サリエルに相談すればなんでも解決してくれる。 こんな風にした原因がたとえサリエルだとしても、相談できる相手はサリエルしかいない。 「全部食べたら教えてやるよ」 もうほとんど残っていないアイスの固まりを舌の上で溶かす。 「ほら、自分で持てよ」 「う、うん……」 俺がサリエルから棒を受け取ると、サリエルは後ろから俺のズボンや下着を脱がしていく。 「ぁっ……する、の?」 「するよ」 「やだ……」 「いやじゃねぇだろ」 嫌じゃなくても、なぜかついやだと答えてしまう自分の天邪鬼さはあまり好きじゃない。 結局、俺はサリエルが脱がせやすいようわずかに腰を浮かせてしまう。 サリエルだって、それには気付いているはずだ。 「ほら、片足ズボンから抜けって」 促され、後ろから左足を抱えられる。 すでに期待するよう俺は勃起していた。 サリエルは、俺の口内からアイスの棒を抜き取ると、その棒で俺の先端を軽く撫でる。 「あっ……ん、んっ!」 「んー、いい反応だな」 「熱っ……熱い」 「冷たいんじゃなくて?」 アイスの蜜が亀頭に触れると、一瞬感じた冷たさを忘れさせるくらい熱い感覚に襲われる。 「やっぱ、すげぇな。アルコールって」 「ある……こーるっ」 俺は理解出来ず、ただサリエルの言葉を繰り返す。 サリエルは棒を傍に置き、今度は俺の口内を指で掻き回した。 「まだ、残ってるか?」 サリエルの指が俺の舌を撫でると、背筋がゾクゾクしてしまう。 「ふぁあっ……ぁあっ!」 俺の体を抱くサリエルの腕にぎゅっとしがみつく。 サリエルは、俺の口内から唾液を奪うと、もう一度、その指で亀頭を撫で回した。 「あっ……ぁあっ……待って……サリエルっ……変、変だからぁっ」 「理由はわかってんだから問題ねぇよ」 俺はまったくわからない。 ただ、いつもサリエルの指が撫でるのとは違い、熱くてぞわぞわして、すぐにでもおかしくなりそうで。 そういえば、体もさっきからぽかぽかしたのが収まらない。 ぽかぽかなんて程度じゃない。 熱い。 「やだっ……熱いっ……熱いってば」 「イきそう?」 耳元で囁かれ、寒くもないのに体が震え、なぜだか涙が溢れた。 「んっ……んぅ……いくっ」 「はい、もう一度ちゃぁんと口で言って俺に教えて?」 頭がぼんやりする。 なんでサリエルにそんなこと言わなくちゃいけないのか、理解出来ない。 思考回路が定まらない。 「あぁっ……サリエルっ」 「教えろよ。ゼルク」 優しく髪を撫でられると、胸の辺りがきゅうっとなって、俺は頷いていた。 「いくっ……ぃくっ」 「ちょーっと亀頭撫でられただけで?」 「違ぁっ……あっ、舌も、撫でられたぁっ」 「ああ、舌も気持ちよかったわけね」 「ぅんっ、あっ、あっ……気持ちぃっ……やっ、やぁっ」 サリエルは、焦らすよう指先を止め、俺の先端から指を離してしまう。 溢れた先走りの液が糸を引く。 俺はサリエルの手を取り、もう一度自分のモノに触れさせた。 「やぁっ……やっ……もっとっ……もっとぉ」 掴んだサリエルの指で亀頭を撫で回す。 ぬるぬるとした感触に、俺の腰がビクビクと震えあがる。 「ぁあっ、いくっ……サリエルっ、いくっ」 「あー、結構飛んでんな」 「やぁあっ……あぁああっ!!」 我慢出来ず精液を吐きだしても、体の熱はおさまってくれなかった。 サリエルの指先に溢れた精液が纏わりつく。 「はぁっ……サリエル……も、もう……」 俺は振り返り、サリエルにしがみついた。 「して……っ……」 「……お前、悪酔いもいいとこだな」 言葉の意味はよくわからないけれど、なんだか拒まれたような気がして、俺はサリエルの体をもう一度、ぎゅっと掴んだ。 「あっ……してよ」 「はいはい。ちゃんと責任取るっての。……それで、なにをして欲しいんだ、ゼルクは」 「あっ……ん、エッチ……したい」 「エッチなんて、生ぬるい言葉じゃなぁ」 サリエルはそう言いながらも俺の髪を撫で、背中に手を這わす。 すでに曝け出してしまっている翼に、ビリビリとした電流みたいなものが駆け巡る。 「あっあっ! だめっ……やだっ、それ」 「あ? ああ、いつもより翼敏感になってんのか? お前好きだったろ。爪の先でこう線引かれるの」 試すようサリエルがまた、爪で線を引く。 「やぁっ、痛いっ……やだっ……やっ」 「痛くて、こんなビンビンに勃起するかよ」 さきほどイったはずなのに、いつしかそこはまた硬くなっていた。 痛いと表現していいのか、俺もよくわからない。 ただ、強すぎる刺激に体が痙攣する。 「やっん! やぁっ……やぁあっ!!」 また射精してしまうと、サリエルは耳元で笑い、翼から手を離し尻を撫でた。 「この状態じゃ、お前押し倒したら、床で翼擦れておかしくなりそうだな」 サリエルにそう言われ、想像するだけで体が強張る。 「やだっ……それっ」 「はいはい、今日は抱っこしてしような」 なんだか子どもでも扱うみたいにサリエルの態度。 それでも嫌な気はしなくて、俺は頷いてサリエルにまたぎゅっとしがみつく。 「サリエルっ……あっ、俺っ……セックスしたいっ……」 「もっと言って」 「サリエルのちんこ、俺に入れて……」 準備するようサリエルの指が俺の中に入り込む。 それだけで、俺はたまらず腰を揺らした。 「はぁっ、ぁっ! あっあっ! ぁあっ!」 「声出しすぎ」 「あっ、出したぃっ、あっあんっ! 声、らしたぃっ」 「今日はそう言う気分? まあいつもだってそれなりに出してるけど」 「俺、あっ……あぁあっ、あんっ! あぁあんぅっ、もっとぉっ……」 「喉枯らすなよ」 サリエルは、早々に指を引き抜きやっと、取り出した熱い高ぶりを押し入れてくれた。 「ひぁあっ!! あっ、サリエルっ……あん、サリエルのっ」 「そうだな」 「サリエルのぉ、気持ちぃっ……いいよぉ」 気持ち良すぎて涙が溢れて、視界が定まらない。 しがみついて必死に腰を動かす。 「んぅっ、あっ……ぐちゃぐちゃしてるっ……サリエルっ……ぁあっあっ!」 頭がふらふらする。 腰が砕けそうになる。 つい、サリエルの背に手を回しそこにある翼に爪を立てる。 「っ……ゼルク、手緩めろって」 「ぁあっ……あっ……中で、おっきくなってるっ」 「くそっ……主導権握ってんじゃねぇよ」 サリエルが俺の腰を抱き、下から突き上げてしまう。 「あぁあっ! あんぅっ!」 「ああ、またイった?」 「はぁっ……イったぁっ……も、らめっ……」 「付き合えよ」 腰を揺さぶられると、結合部分からぐちゅぐちゅといやらしい音が響いた。 俺の腸液が溢れてサリエルのちんこと絡み合う音。 サリエルが引き抜いて差し込むたび、俺が溢れさせた精液も、中に押し込まれているかもしれない。 ぬるぬるで、ぐちゃぐちゃで、俺はお腹の辺りに違和感を覚える。 「はぁっ……あっ、サリエル……俺っあんっ……出ちゃうっ」 「んー、さっきから出してんだろ」 「違っ……ぁあっ……おしっこ出ちゃうっ……も、もぉ、お腹、突かないでっ」 「ああ……いいぜ。別にお前が漏らすのだって、初めてじゃねぇしな」 サリエルは、さきほど以上に俺の体を揺さぶって、お腹を突き上げる。 内壁を擦られ、押さえつけられて、たまらず俺は身震いし、サリエルの体へと尿をまき散らす。 「んぅうっ……やぁっ、サリエルっ」 「結構溜まってた?」 「はぁっ……ぁ……止まんなぃ……っ」 それでも、サリエルは腰を動かし続ける。 「そろそろ、俺も、イきそ……」 「サリエルっ……やぁっ! やっ……あぁあっ!!」 サリエルが、俺の中で精液を吐きだした頃、俺は意識を手放した。 「……うーん」 うっすら目を開くと、そこには俺を見下ろすサリエルの姿があった。 「起きたか」 「……俺、寝てた?」 「寝てたのか失神したのか、微妙なとこだな」 いまいち頭がぼんやりして記憶が定まらない。 放課後サリエルの部屋に来て、確か俺はアイスを貰ったはずだ。 それでいて、流れでなんとなくセックスしたのは覚えてる。 それに、なんだか自分がすごく積極的だったことも。 「そういえば、なんか体熱かったんだけど」 「もう治っただろ」 「……そうだな。なんだったんだ、あれ」 サリエルはふぅ……と、小さくため息をつく。 「アルコールっつって、人間界の飲みもんが原因だ」 「……原因っつったって、別に俺飲んでねぇじゃん」 「いや、アイス食べただろ。あれにアルコールが混ざってんだよ」 それで、俺の体はどうやら一時的に熱くなっていたらしい。 「……つまりサリエルのせいってこと?」 「俺が食べたときは別に大したことなかったんだけど、体質でだいぶ違うらしいからな」 まるで夢の中の出来事のように記憶が曖昧だけれど、やっぱり俺はどうやらだいぶ狂っていたらしい。 「サリエルのせいだ!」 「あー、はいはい」 「サリエルのせいであんなっ!」 思い出すだけで、顔がかぁっと熱くなる。 うまく思い出せないけれど。 「それで、俺にどう詫びて欲しいんだ、お前」 「ど、どうって……」 別に、許さないとか思っているわけじゃない。 サリエルは、自ら一度はこのアイスを食べて、大したことはないと感じたから俺に食べさせたのだ。 「悪気は無かったんだよな、サリエル」 「悪気はねぇけど、あわよくば狂ってくんねぇかなぁとは期待してたな」 「もー、なんでそういうこと素直に言っちゃうんだよ」 「いいだろ。ゼルクがどんだけ狂っても、俺はひかないってこともわかったし」 確かに、狂ってもひかないでいてくれたのはありがたい。 いや、そもそもサリエルのせいなのだから、ひくなんて論外だ。 「……サリエルも、俺の前で狂えよ」 「あいにく俺はアルコールに強いらしい」 「たくさん飲めば狂うかもしんないだろ」 俺がそう言うと、なぜかサリエルはニヤリと笑う。 「ゼルク、お前狂ってたけどたぶん、心にもないことはしてないぜ?」 「っ……ど、どうでもいいし、そんなの」 「つまりさぁ、俺が狂ったら、日ごろからしたいけど抑えてることとか強要しちまうかも?」 「それって……」 キラリとサリエルの剣が光る。 ダメだ、この人にアルコールを大量に与えたら大変なことになってしまう。 「……もういい。しばらくサリエルとはこういうことしない!」 「ふぅん」 「したいってお願いされても、俺がいいって言うまでしないからな!」 「どうぞ」 サリエルはにっこり笑い、俺の条件を受け入れてくれる。 「……ホントに、ホントだからな! 無理矢理するとか無しだぞ」 「わかったって。言うこと聞いてやるよ」 どうやら、本当に約束してくれるらしい。 これで、サリエルが突然俺に手を出して来たりすることはないはずだ。 「………………」 「じゃ、ゼルク、今日はもう部屋戻るか?」 「…………うん」 ドアノブに手をかけるが、サリエルが俺を引き止める様子はない。 「そ、そうだ。俺がしたいって言ったときは、してもいい」 俺は、サリエルに背を向けたままそう伝える。 「はいはい」 「……あ、あと、キスくらいなら別にサリエルからしても許すし」 「ふぅん。じゃあ、今度、気が向いたらするわ」 そう背後から返事が聞こえて来る。 バカ。 ホントむかつく。 今引きとめてすればいいのに。 俺の腕掴んで、強引に奪えばいいのに。 バカ。 ムカついて、俺は振り返るなりサリエルに突進した。 そんな俺の体を、まるで予測していたみたいにサリエルが受け止める。 「バカ……」 「どっちがだよ」 サリエルは、俺の体を抱き頭を撫でてくれた。 優しくて温かい手つきだ。 「……今日、キスしてない」 「そうだな」 「……やっぱり、泊まることにする」 「わかった。とりあえずクーシー連れて来るだろ」 「うん」 「じゃあ、行くか」 サリエルは俺を引き剥がすと、不意打ちで唇を重ねる。 「ん……」 少し物足りないくらいのキス。 それでも、なんだか恥ずかしくて俺は顔を伏せた。 「ほら、行くぞ」 俺はサリエルに手を取られ、クーシーを迎えに自分の部屋へと向かった。、 |