■堕天使症候群 番外編■ ※ドラマCD堕天使症候群番外編。過去のラグエルネタになります。 「じゃあ、ラグエル! またね」 「うん、また……」 アミーの背中を、今日もまたなんでもないフリをして見送る。 体の奥が、ズキズキと痛む。 「んっ……」 アミーに羽を撫でられた後は、決まって体が熱くてたまらなかった。 部屋に戻るべきだとわかっているのに、そこまで行く余裕すらなく、僕は周りに人がいないのを確認するとすぐさまズボンのチャックを下ろし、自分のものへと指を絡める。 「ふぅっ……あっ……」 アミーの声や手の感触を覚えているうちに、どうにかしてしまいたい。 「あ、アミー……あっ」 アミーは天使の羽が珍しいのか、いつも丁寧に僕の翼を撫で上げてくれる。 一枚一枚、羽を確認するように。 ときどき爪を立てられると、くすぐったくてもどかしくて。 出来ることならアミーに撫でられ続けたまま、欲望を放てたらいいのにと何度思ったことか。 けれどもこんなはしたない自分を晒すわけにはいかず、ただぐっと堪え、いつもアミーの感触を思い返しながら行為にふける。 自分では上手く手の届かない翼の付け根あたりを、もっといやらしく撫でて欲しい。 「あ、んっ! んぅっ」 もどかしくて、身をよじりながら、翼の先端を撫で上げる。 こんなんじゃ全然足りなくて、息苦しくて。 自分の熱を高めることに必死になっていると、後ろから誰かの近付く足音が響いた。 「っ……」 やるせない気持ちで行為を中断し、振り返る。 そこに立っていたのは、同じ中級クラスのサリエルだった。 「……なにやってんだ、お前。1人で外でするとか変態か?」 「……見てたのかよ」 「んなとこでやるお前が悪いんだからな」 それは重々承知している。 しょうがなく今日は部屋へ戻ろうかとしたそのとき、 「ラグエルって、普通の天使より羽デカいよな」 物珍しそうに、サリエルが俺の翼に触れる。 「あ……」 たかが少し触れられただけだというのに過剰反応してしまう。 ピクリと跳ね上がってしまった体を見られ、かぁっと顔が熱くなった。 「ん? デカいだけじゃなく、結構感じちゃうタイプ?」 サリエルは俺の反応を見逃してくれず、ニヤリと笑うと指先で翼をなぞっていく。 「あっ……やめ……」 「あー……気持ちよさそうだな」 サリエルの言う通り、気持ちがよくて流されそうになる。 それでもアミーの感触がサリエルにかき消されてしまうが怖くて、僕は逃げるようサリエルへと向き直った。 「はぁ……あ、触るな」 「うわ……お前、すっげぇエロい顔してんぞ」 「違……っ」 「違わねぇって。……自分じゃ撫でれねぇだろ? やってやるよ」 一瞬、期待してしまった。 いつもアミーには頼めなくて、もどかしくてたまらなかった行為を、サリエルならしてくれる。 そう迷ってしまったのは間違いだったのかもしれない。 その隙に、サリエルは僕の腕を引き体を抱き寄せ、背中に手を這わす。 「嫌なら翼隠せよ。お前、中級クラスなんだしそれくらい簡単だろ?」 付け根の辺りを撫でられると、翼を隠す余裕なんてものはまったく無くなっていた。 「はぁっ……んぅっ! んっ!」 「んー……冗談のつもりだったんだけど、マジでして欲しい?」 「やっ……やめっ……あっ」 「別に見返りとか求めてねぇから。1人で外でやってるくらいだし、溜まってんだろ」 サリエルは、俺の体をうつ伏せに寝かせ、手の平でたっぷりと翼を撫で上げる。 「あ、ん! あっ!」 「声殺せねぇくらいになってんじゃん。……いいぜ。もっとやらしい撫で方してやるよ」 言葉通り、サリエルの指先が僕を感じさせるよういやらしく翼に纏わりつく。 いままで僕が望んでいた感触。 アミーの感触が、サリエルで上書きされていく。 その事実より、いまはただ快楽に身を委ねてしまう。 「ぁんっ! あっ……はぁっ……やぁっやっ! やぁあっ!」 ビクビクと体が震えイってしまうと、僕の中で歯止めというものが効かなくなっていた。 「は……もうイっちゃった?」 「あ……サリエル……もっと……」 「はいはい」 「あんっ……あっ! もっとぉ……っ、もっと、してっ……そこっ」 好きな人には決して晒せない、はしたない自分。 なんとも思っていない相手だからこそ、晒せる自分。 散々待ちわび望んでいた快楽を、好きでも無い相手に与えられる。 これでいいものか頭は混乱するのに、ただ気持ちよくて、今はサリエルにねだることしか出来なくなっていた。 サリエルに翼を撫でられながら、四つん這いになり自分のものを擦り上げていく。 「はぁっん、んっ!」 「またイきそう?」 「ひぅっ、いくっ……ぅあっ、ん! いくっ……あぁあっ!!」 二度、欲望を開放させると、ただ僕の中には虚無感だけが残った。 「……もう帰るよ」 「……そう? 次会ったときは覚悟しろよ」 「覚悟……?」 「ああ。次、求めやがったらさすがにここで終わらせてやる気はねぇからな」 さっきは見返りなど求めていないと言ってくれていた。 次はそうもいかないのだろう。 「…………帰るよ」 もう君に頼ることはない。 なぜかそう言えなくて、僕は1人、部屋へと向かった。 「アミー……」 僕ははしたない天使だ。 君に撫でられることを想像しながら、何度も欲望を放った。 君でいやらしいことを考えて来た。 純粋で綺麗な君には、僕のこのはしたない考えや姿は晒せない。 僕はきっと、アミーにはふさわしくない天使だ。 |