■フルーレティ■6/4■サタナキア■
※「Hybrid症候群」「Angelsyndrome」と同じ世界。
※虫に似た魔物(フルーレティ)を使い魔とするサタナキアのお話。
サタナキア受、バラキエル受っぽい表現がございます。




 森でフルーレティと日向ぼっこしていると、一匹の獣が近寄って来る。
 フルーレティが気になるのかもしれない。
「……食べちゃダメだよ」
 獣に比べて小さなフルーレティが心配で抱き抱える。
「食べないよ」
 そう答えたのは青い髪をした生徒だった。
「ちゃんとしつけてるから。人の使い魔を食べるなんてことしない」
「この子がボクの使い魔だって、わかるの?」
「なんとなくね」
 その生徒の後ろには、獣以外にドラゴンたちもいた。
「その子たちは、君の使い魔?」
「うん」
「たくさんいるね」
 5匹もいる。
 魔物が好きなのかもしれない。
 フルーレティが腕の中で微かに光る。
「……珍しい色してるね」
「そうなの? 似たタイプの魔物は見たことがないから、珍しいかどうか知らないんだけど」
「もう少し赤くて似たやつなら、何度か森の奥で見たことある」
「それって仲間かな」
「そうかもしれないね。会わせてみたらわかるんじゃない?」
 そう言い残し、青髪の生徒は森の奥へと入っていく。
 ……ボクはまだ、フルーレティのことをよく知らない。
 フルーレティの仲間なら、会ってみたい。
「フルーレティも、会いたい?」
 フルーレティがほんのり光を強める。
「じゃあ明日行ってみよう。みんなでね」
 フルーレティには子供がいる。
 フルーレティが分裂したもの。
 家族で仲間だ。
 名前はみんなフルーレティだけど。
 どうせなら、みんなで一緒に会いに行こう。
 そう予定を立て、部屋へと戻った。



 翌日。
 せっかくなので、クラスメートのバラキエルも誘うことにした。
 バラキエルはこの学園にボクが来た頃からの友達で、フルーレティとも仲良くしてくれている。
「バラキエル! 今日の放課後、暇?」
「んー? 遊ぶの?」
「森に行かないかなーって。森、怖い?」
「怖くないよぉ。行く行くー」
 ……バラキエルは天使だ。
 ボク達悪魔とは違う。
 悪魔に比べてバラキエルみたいな天使は、ちょっとだけトロい。
 なにか危険があったとき、逃げ遅れるのは決まって天使。
 その上、どうも魔物と相性が悪い。
 とくにドラゴンタイプの魔物は天使の羽が好きらしく、食すこともあるらしい。
 基本的には、天使が森をウロつくことは少ない。
 だからこそ、森はバラキエルにとって興味のある場所となっている。
「実はね。森にフルーレティの仲間がいるかもしれないんだ。昨日会った子が似た魔物を見たって」
「レティちゃんの仲間?」
「かもしれない。今日はみんなで会いに行こうと思ってる」
「楽しみだねぇ。あ、アミーも誘おうよぉ」
 バラキエルはクラスメイトのアミーが大好きだ。
 彼の真っ黒な髪や羽がお気に入りらしい。
「いいよ。来るかな」
 断わられる。
 そんな気はしたけれど、少し離れた席に着くアミーの下へと向かう。
「アミー。今日の放課後、ボクとフルーレティとバラキエルで森に行くんだけど。一緒に行く?」
「……やめとく」
「うん。わかった」
 やっぱり、予想出来てはいたけれど、いざ断られると少し寂しい。
「バラキエルに気をつけてって、伝えておいて」
「わかった」
「サタナキアも……気をつけて」
「ボクは平気だよ」

 言伝を預かり、バラキエルの隣に戻る。
「アミー、行かないって」
「ふぅん。やっぱダメかぁ」
「気をつけてーって言ってたよ」
「アミーは心配症だねぇ。森に行ったら、アミーになにかお土産拾ってこよう」
「お土産になるものなんてあるかな」
「魔物の卵とかぁ、ドラゴンの鱗とかぁ」
「バラキエルの好きなものばかりだね」
「ふふ……そうだねぇ」
 それでいて、アミーが嫌いそうなものばかりだけど。
 
 授業を終えたボクたちは一旦、部屋に戻った。
 さっそく留守番をしていたたくさんのフルーレティたちを連れて、森の中へと足を踏み入れる。
「レティちゃんの仲間は、どこら辺にいるのかなぁ」
「もう少し詳しく聞いておけばよかったね」
「森を散策するのも楽しいから、ゆっくり探そー」
「うん」
 バラキエルは、ゆっくり……なんて言ってくれるけれど、日が落ちれば夜行性の危険な魔物たちが動き始めてしまう。
 あまり時間はかけられない。

 間違って踏みつけないように。
 足下の葉っぱを掻き分けたり、木の枝を眺めたり、目を凝らし探す。
 なかなかそれらしい子は見当たらない。
 そう簡単に見つけられるものでもないのだろう。
「ねぇバラキエル……今日は諦めようか。結構奥まで来ちゃったし。そろそろ引き返した方がいいかも」
「んー。サタナキアは疲れちゃった?」
「疲れてないよ」
「じゃあもう少し奥まで行ってみようよー」
「危ないよ。戻るのにだって時間はかかる」
「えー?」
「もうバラキエル、ちゃんとわかってる?」
 バラキエルの肩を掴み、こちらを向かせる。
 勢いよく振り返ったせいで、バラキエルの前髪が乱れた。
 いつもは見ることのないバラキエルの瞳が、ボクを見据える。
「……わかってるよ。急げばそこまで時間はかからないでしょ」
 口は笑っているけれど、目は笑っていない。
 ……バラキエルはわかっているんだ。
 ボクが羽を広げて飛んで帰れば、短時間で森を出れるということ。
 けれどバラキエルはそんなに速くは飛べないし、そもそも森で天使が翼を広げたら魔物に狙われてしまう。
 歩いて帰るしかない。
 ……ボクがバラキエルを気遣っていることくらい、バラキエルはお見通しだ。
「……やっぱり時間はかかるよ」
 バラキエルの前髪を指で梳かして目を隠してあげる。
「……ふふ。ありがと。でももう少しだけ行こ? 俺は怖くないから」
 バラキエルなら、ドラゴンにびっくりしてうっかり翼を出しちゃうなんてドジはしないだろう。
「わかった」
 一応、バラキエルの手を引いて、ボクたちはもう少し奥まで進んだ。

 それでもやっぱりフルーレティに似た子は見つかることなく日が傾く。
「フルーレティ、ごめんね。今日は見つけられなかったみたい。……バラキエルもごめん」
「俺に謝ることなんてなにもないよぉ。俺は森に来られて楽しかったからー」
「ありがとう」
「でもさぁ、レティちゃんって暗い所の方が目立つよね」
「……そうだね」
「レティちゃんは夜行性だよね」
「……うん」
 夜まで待てば、フルーレティに似た子が光を放つかもしれない。
 見つけられるかもしれない……そう言いたいんだろう。
 けれどそれは危険だ。
「似てるってだけで、その子たちが光るかどうかもわからないし。また改めて、情報を教えてくれた生徒に詳しい話を聞いてみるよ」
 その方が効率がいい。
「そっかぁ」
 バラキエルも納得してくれたのか、ボクと一緒に出口の方へと足を向けてくれた。
 少し歩くと、警告の鐘が鳴り響く。
 夜行性の魔物が騒ぎ始める合図の音。
 後ろ髪を引かれる思いで振り返る。
 すると木の陰から、微かに光が漏れていた。
「あ……」
「レティちゃんの仲間かも!」
 これ以上、足を止めるわけにはいかない。
 そう思いはしたけれどバラキエルが手を引いてくれた。

 そこにいた魔物は手の平くらいのサイズで、ほんのり赤みを帯びていた。
 大きな葉っぱの上にちょこんと乗っかっている。
「レティちゃんに似てるね」
「うん。かわいい……」
 ボクの足にくっついていたフルーレティが一匹光る。
 赤い子と同じくらいの大きさだ。
 その子を手に取り、赤い子と同じ葉っぱの上に乗せる。
 二匹は光ながら寄り添うと、ゆっくりとした速度で体を重ねた。
「サタナキア。レティちゃん絡まっちゃうよ」
「たぶん、大丈夫」
 初めて見るけれど、危険は無さそうだ。
 お互いに粘膜のようなものを出し始める。
「あれ、なんだろう。エッチなことするとき、たまに出してるよね。レティちゃんの性器かな」
「そうかもしれない」
「じゃあ、この子たちはエッチなことするんだね」
「うん……。たぶん、繁殖行動だね」
 バラキエルとボクは、二匹から目が離せなくなっていた。
「きれい……」
 赤と黄緑の光が混じ合う。
 こっちが興奮してしまうほど、お互いの粘膜が絡みつく様子を見せつけられる。
「ん……なんだか、熱くなってきちゃった」
 ボクだけじゃない。
 残りのフルーレティたちも、二匹に触発されたのか光を放ち体をうねらせ始めた。
「んん……」
 フルーレティたちが体全体で、ボクの太ももを撫で上げる。
「レティちゃんたち、光ってるね」
「うん……気持ち、いい……」
「いいなぁ」
「……バラキエルも、する?」
 スカートを捲りあげ、足に絡みつくフルーレティたちを晒す。
「ん……したい」
「翼、出さないように我慢出来る……?」
「うん……我慢する。するから、ちょうだい」
 こんな場所で危険だとは思ったが、ボクたちはその場に座り込んだ。
 念のため、バラキエルの背中を守ろうと、木にもたれさせる。
 向かい合わせになって、取り出されたバラキエルの性器に自分の性器をすり寄せた。
「フルーレティ……バラキエルの性器にも、絡みついてあげて」
 足をつたい性器へと集まって来たフルーレティたちが、ボクの言葉に従いバラキエルの性器にも纏わりつく。
「はぁ……あ、キたぁ……ん、ん、レティちゃん、かわい……」
「うん……ぁ……はぁ……ふふ……いつもより、興奮してる、みたい……」
「はぁ……あっ、あっ、ん……吸いついてる……すごぃ……今日のレティちゃん、がっついてる……ね」
「近くで……あんなきれいでいやらしい行為見せつけられたら、ね……。興奮しちゃうよ……」
「うん……ん、あっ……ん……俺もぉ……いつもより、先走り出ちゃって……る?」
「フルーレティ、おいしそうに口元動かしてるね」
「うん……ん……きもち、い……。あっ……あっ、ちゅくちゅく吸われ、てる……」
「……どうする? 尿道まで弄らせようか?」
「はぁ……したい……したい、けどぉ……ん、それ、気持ち良すぎて、羽出ちゃいそ……」
「じゃあ外だけ……フルーレティ、今日はナカに入っちゃダメだから……ね? 亀頭だけ、たっぷり吸って? ボクも、一緒でいいよ」
 鈴口を開こうとしていた小さなフルーレティが、行き場を失いながらも、キツめに亀頭を吸い上げる。
「んんっ……ん……すご……ぃ……いいよ……フルーレティ……」
「あっん、ねぇ、サタナキアぁ……。レティちゃんから、性器……みたいなの、出てる……あ あはっ……レティちゃん、俺たちに性器、擦りつけてたんだぁ……んっ……かわい、すぎ……」
 かわいい。
 愛おしい。
 たまらなく興奮する。
 亀頭に絡みつくフルーレティより少し大きな子たちも、竿に巻き付いて、ぎゅうぎゅうと締めつけてくれた。
「はぁ……ぁん、うん、ん、ん……イっちゃいそ……あっんんっ!」
「あぁ……俺もぉ……いくっ……ん、出るっ、あっん……んぅんんっ!!」
 ビクンとバラキエルが体を跳ねさせ、絶頂を迎える。
 釣られるようにして、ボクも達していた。
 溢れた精液を、フルーレティが拭い取っていく。
「はぁ……あ……ふぁ……」
「最高だよぉ、サタナキア……あは……魔物と、性器擦り合わせちゃったぁ」
「うん……ん、最高、だね。でも、翼は出しちゃダメだよ」
「わかってる」
 体を落ち着かせながら、すぐ傍で絡み合ったままのフルーレティたちに目を向ける。
 2匹の他にも、近くからいくつか赤い光が漏れていた。
 何匹か隠れているようだ。
「きれーい。レティちゃんの仲間、たくさんいるねぇ」
「うん。みんな興奮してるみたいだね。すごく光ってる」
「かわいいねぇ。他の子たちの交尾見て興奮するなんて」
「バラキエルも、興奮したでしょ」
「いまもしてるよ……。レティちゃん、欲情してる魔物たちに見守られながら交尾するって、どんな気分だろうねぇ。いいなぁ。マワされるんじゃなくてぇ、見守られるんだよ。みんな欲情してるのにぃ」
 バラキエルは少し変わったところがあるから、ちょっと変なものに興奮してしまうのかもしれない。
「このまま終わらなきゃいけないなんて。天使ってホント、つまんない」
「安全な場所で遊べばいいよ」

 結局、フルーレティと仲良くなった赤い子を一緒に連れて帰ることにした。
 赤い子を仲間から離してしまうのは少し心が痛むけど、フルーレティととても仲良しだったから。
 いままでずっと一緒に過ごして来たフルーレティを一匹置いて来るわけにもいかない。
 部屋に戻った頃には、2匹は疲れたのか光らなくなっていた。
 近くに並べて置いておく。
「ねぇサタナキア。フルーレティちゃんって、分裂するんじゃなかったっけぇ。分裂して増えると思ってたんだけど」
「うん。ボクもそう思っていたけど、分裂じゃなくて1匹で繁殖してたのかなぁ」
「一匹で繁殖かぁ。個体で繁殖できるのに、赤い子とエッチなことするって、不思議だねぇ」
 繁殖目的以外で性行為をするなんて……なんてかわいらしいんだろう。
「この子たちにも感情があるってことだよ」
 ボクたちと同じように。
「どんな子が産まれるんだろうね。フルーレティ」
 数日後にはきっとまた新しい家族が増える。
 今日はフルーレティのことを、少し多く理解出来たような気がするのだった。