■天使たちの休息■シエル×ラウム
※「Hybrid症候群」未プレイですと解かりにくい表現が含まれております。
「Hybrid症候群」天使(シエル×ラウム)ルートの彼らになります。
(他ルートに比べ、シエルの癖が少々強くなっております)




 学園からの帰り道。
 俺と話すため後ろを向きながら歩いていたシエルが、うっかり、前から来た生徒とぶつかってしまう。
「うわぁ、すみません!!」
「う、ううん。ごめんね。僕も全然、前を見ていなかったから」
 その人は、ぶつかった拍子に落としそうになってしまった卵を慌てて大事そうに手の平で包み込む。
 俺達は、興味本位でその卵を覗き込んだ。

「それ……なんの卵ですか?」
「これはね。ボティスの……魔物の卵だよ」
「魔物……!?」
 シエルは、少し警戒するよう後ずさる。
「大丈夫だよ。魔物って言ってもボティスは大人しいから」
 それでも、天使のシエルには馴染みのないものだ。
 そもそもこの人が悪魔である可能性も高くなる。
 そんな俺たちの警戒心に気付いてか、その人は優しく笑う。
「君たち、白学の校舎から出て来たし、天使かな。僕も天使だよ」
「そうなんですか!」
「ふふ。新入生かな。まだ魔物には慣れてない?」
「はい……」
「ここなら、天使が扱える魔物もいるし、とってもかわいいから。お友達になれるといいね」
「お友達って……魔物と?」
「そう。産まれてすぐの魔物なら、天使にだって懐きやすいと思うよ」
 目の前の人は、服の隙間から蛇のような生き物を出して見せる。
「この子だよ。ボティス。小さい頃から育てたんだ」
「天使でも平気な魔物なんですね。ねぇ、ラウム。なんだかこの子、かわいいね」
「うん」
「ホント? 嬉しいな。産まれるか分からないんだけど、卵、あげようか?」
「え! いいんですか!? 1つしかないんじゃ……」
「ううん。部屋にはたくさんあるからね。同じクラスに優秀な天使がいるんだけど、その人が言うには、精子と卵が合わされば、もしかしたら……ってことらしいよ」
「もしかしたら……産まれるかもしれないってこと?」
 どうにも信憑性に欠けるが、俺は世間のことを良く知らない。
 ただ2人のやり取りを見守る。
「精子って、天使の精子でもいいのかな……」
「どうだろう。それはわからないんだけど……」
「でも俺、試してみたいです! ラウム、一緒に試してみよう」
「……一緒に?」
「そうか、君たちは仲良しなんだね。だったら、お腹の中で、温めてあげるといいかもしれないね」



 こうして俺たちは1つの卵を手に入れた。
 ピンク色の小さな卵だ。
「ラウム。さっそくしてみようよ」
「出来るかな……」
「わからないから試すんだよ」

 なにが正しいかなんて、考えるのはもうとっくにやめた。
 シエルがそう言うのなら。
 シエルが望むのなら。
 それが全てだ。
 今日出会った天使のことを疑うことも無意味だ。
 シエルが信じるのなら、否定する気はない。
「ラウム。俺が精子かけてあげるから、ラウムのお腹であっためてみようよ」
「……うん」
「ラウムが嫌なら、俺のお腹の中でもいいよ?」
「別に、嫌じゃないよ」
 イイというわけでもないけれど。
 シエルが望むことに対して、嫌という感情は沸かない。
 ……沸かなくなった。
「精子かけてからあっためた方がいいかな。でも、先に人肌の温度に合わせたようがいいよね」
「うん……」
「じゃあ先に入れよう。……その前に、キスしていい?」
「うん……」
 シエルとするキスは、たぶん普通じゃない。
 けれど、俺はシエルとしかしないし、これがいつしか当たり前になっていた。

 舌を差し出すと、シエルは手にしたハサミで表面を傷つける。
 もちろん、シエルは自分の舌にも、慣れた手つきで線を引く。
 口を重ねて、舌を絡めて、お互いの血を味わう。
 それが、俺とシエルのキスだった。
「ん……ぅん……」
 傷はついているけれど、痛みは伴わない。
 シエルが、痛覚を麻痺してくれているから。
 シエル自身は、これくらいの痛みなどどうってことないらしい。
 これは、俺たちが近づくための行為だから、それに伴う感覚は、たとえ痛みであっても、感じていたい……以前、そんなようなことを言っていた。
 だから、麻痺しているのはおそらく俺だけだ。
 いずれは俺も、シエルと同じように痛みを受け入れる日が来るのかもしれない。
「はぁ……ラウム……」
 シエルは熱っぽい声で名を呼びながら、俺の体を押し倒す。
 淡々と服を脱がして、されるがまま仰向けに寝転がる俺の足を開いた。

「……シエル。ゆっくりが、いい……」
「うん。なんだか、不思議な気分だね。魔物の卵を、ラウムに入れるなんて」
 シエルは奥まった秘部に唾液を絡め、しっかりと準備してくれる。
 手にした卵のサイズは、それほど大きくない。
 普段、シエルのを咥え込んでいる俺なら、そう負担もないだろう。
「じゃあ、ゆっくり入れるね」
 シエルの言葉通り、ゆっくりと卵が押し込まれてくる。
「んっ……ぅんん……あっ……ぁっ」
「……すごいね。ラウムのここ、おっきくなってる。もう、いやらしい気分になっちゃった?」
「……ん……うん……」
「ちょっと舐めて、卵入れただけなのに?」
「はぁっ……ら……って」
「いつもとちょっと違うから、興奮してる?」
 コクコク頷く俺の頭を優しく撫でながら、シエルは指でなおも卵を押し込む。
「んんっ! あっ……ひぁっ! あぁっ!」
「大丈夫……。落ち着いて? じゃあ、一番気持ちいいところは、避けてあげるから。ね?」
 シエルは、俺の体を知り尽くしている。
 適当に、浅めのところに卵を留めて、俺の隣に寝転がる。
 俺は、そっとシエルの方へと体の向きを変えた。
「どれくらい温めようね。ラウム」
「ん……ん、はぁ……あ、長くは……キツい……かも」
 絶妙に避けられてナカを押し広げられている感触が、たまらなくもどかしい。
「すっごくエッチな顔してる。気持ちいい?」
 少し熱っぽいシエルの口調も、俺を興奮させる材料にすぎなかった。
「ん……いい……ぁっ……んっ」
「ラウムって、いつの間にかココになにか入れるの大好きになっちゃったよね」
 指摘され、かぁっと顔が熱くなる。
「ぁっ……シエルがっ……する、からっ……」
「そっか。いつの間にかじゃなくて、俺がたくさんしてるから、か」
 シエルはうっとりした表情で俺を眺め、頬を撫でる。
 その手つきすら、いまはいやらしく感じた。
 首筋を辿り、胸元へとそっと指先が這う。
「んっ! んっ!」
「かわいいね、ラウムは。乳首まで勃っちゃってる。触って欲しそう……」
 コクリと頷いてみせるが、シエルは首を横に振り、肝心な場所には触れてくれない。
「言ってよ。ラウム」
「はぁっ……さわ……って」
「どこ?」
「っ……乳首……さわって……欲しい……」
「うん。いいよ」
 シエルは、ときどき俺になにをして欲しいか言わせてくる。
 シエルの要求になんでも否定せず応えているせいか、たまには俺の方から求めて欲しいということだろう。
 だから、俺も恥ずかしいけど、口にする。
 口にすれば、シエルは否定せず尽くしてくれる。
「ぁっ……んっ……もっと……さわって……摘まんで……」
「ん。こう?」
「ひ……ぅっ……んっ……んぁっ……あっ……ひぁっ……左だけじゃ、なくて……あっ、あっ……右も……っ」
「うん。両方してあげるね」
 シエルが、両方の乳首をきゅっと摘まんで、指先でやさしく揉みしだく。
 ここも、以前はそんなに感じなかったけれど、回数を重ねるごとに敏感になっていった。
 軽く引っ張られたり、つねられたりするだけで、体が熱くて頭がぼんやりする。
「んぅっ……ぁっあっ……シエ、ル……ふぁっ、あっ!」
「あぁ……ラウム。もうたくさん濡れてきちゃってるよ」
 シエルは、片方の乳首から手を離すと、俺の下肢に手を伸ばし、勃ちあがっているモノの先端を撫でる。
「あっ! ……あぁあっ! シエルっ……らめ……っ!」
「らめ……? どうしたの、ラウム……。すっごくかわいい声出しちゃって。そっか。まだ舌の傷治してないから……ちょっと、上手くしゃべれない?」
 確認するように、シエルの指先が舌の傷口を撫でる。
 けれども、治してくれる様子はない。
「あは……すごい。ぬるぬるして……あったかいね。ん、飲ませて……?」
 シエルは舌を伸ばし、溢れた血を欲しがる。
 俺は少し体を起こして、シエルに覆いかぶさると、シエルの舌先めがけて、口内に溜まった血と唾液を垂らした。
「ん……ぅん……ありがと……」
 シエルは俺の唇を塞いで、さきほどよりも激しく舌先を絡ませる。
 たくさんの血が溢れて、ぐちゅぐちゅといやらしい音が頭に響いた。
「ふぁっあっ……ん! シエル……!」
 やっと口を解放され、寝転がり直そうとしたそのとき、体内に入り込んでいた卵が僅かに位置を変える。
 その瞬間、電流でも流されたみたいに背筋がゾッとした。
「ふぁああっ、ん……んっ! あぁんんっ!」
「ん? どうしたの、ラウム」
「あっあっ……卵……っ!」
「ああ……気持ちいいとこ、当たってる?」
「ひぅ……んっ。あらって……あっ! んっ! ぁあっ!!」
 少し身動ぎするだけで、強く内側を押さえつけられ、身体がビクビク震え上がる。
 イク――
 そう思った瞬間、シエルの指が、根元をぎゅっと締め付ける。
「ひぁあっ!? あっ!! あっ!」
「待ってよ、ラウム……。もしかして、卵だけでイきそうになった? 俺のしたことで気持ちよくなってくれるのは嬉しいけど。いま、卵だけで感じた?」
 シエルは、独占欲が強い。
 嫉妬心も強い。
 前はこうじゃなかったと思うけど、そうさせたのは俺だ。
 たぶん、卵にすら嫉妬しているのだろう。
「ん……ちが……ぁっ……。シエルが……あ、いれた、から……」
「俺がいれたから、気持ちよくなってくれてるの?」
 俺はコクコク頷き、自分が気持ちよくなっているのはシエルのおかげだと訴える。
「ひぅっ……うんっ……乳首も……ぁっあっ、された、しっ。キスも……!」
「うーん。そっか。そうだよね」
「ぁっ……ぁんっんっ……シエル……あっ、がまん……れきなっ……」
「我慢出来ないと……ラウムは、どうなっちゃうの?」
「わか……なっ……ぁっ、や……らぁ……や、うっ……ひく……んぅんんっ! ひくっ、ひぁっ……あぁああああああっ!!」

 シエルに根元を掴まれたまま、ガクガクと体が震え、自分がイったのだと自覚した。
 それでも、射精は出来ていない。
 変な感覚で、身体の制御が効かない。
「やうっ……やぁあ……やっ……シエルっ」
「かわいい……。ラウム、射精せずにイっちゃったんだ……。ね、なんでそんな、や……とか言うの?」
 シエルを否定しているわけではない。
 それでも、いまの状況が肯定できず、シエルの腕にぎゅっと爪を立てる。
「はぁっ……ん……。ん、しゃせぇ……したぃ……シエ、ル……」
「うん。いいよ。俺もしたい……。卵にもかけたいけど、いまはラウムの奥の方で出したいな。……だから、卵、出せる?」
 シエルは、やっと俺の根元から手を離してくれる。
 代わりに、俺の足を掴んで、両側へと大きく開いた。
「ね。ちゃんと見ててあげるから、出して」
「そん……な……」
 恥ずかしい。
 なんて言葉は、シエルに通用しない。
 それくらい解っていた。
 シエルの視線から逃れるよう、顔を逸らす。
 シーツに爪を立てながら、俺はぐっとお腹に力を込めた。
「ん……んぅん……!」
「うん……かわいくヒクついてる。いいよ……。ラウム。がんばって」
 ゆっくりと、秘部が押し開かれていく。
 ただ、卵を押し出すだけ……。
 にも関わらず、とてつもない興奮を覚えた。
 なんだかはしたない。
 そんな俺を、シエルは全部、受け入れて可愛がってくれる。
「ひぅっ……ん、ぁあっ……れる……シエルっ……!」
「うん……。いいよ」
「らめ……あっ……れひゃ……うっ……あっあっ……んぅんんーーっ!!」

 ずるりと卵が抜け落ちると同時に、射精してしまう。
「あっ……あぁっ……んぅっ!」
「ああ、出ちゃうって、精液のことだったんだ。卵出すの、気持ちよかった?」
「んっ……ん……きも、ひぃ……」
「そっかぁ。俺のと、どっちが好き?」
 シエルは、俺を横向きに寝かすと、後ろから体を抱き、いまだヒクつく秘部へと亀頭を宛がう。
「あっ……あっ……シエル……のほう……すき……」
「ありがと。ラウム」
 そのまま、落ち着く間もなくシエルのモノが俺の中へと押し込まれる。
「あぁあっ、あっ! んーっ!」
「あぁあ……卵が入ってたからかなぁ。ラウムの中、いつもと、ちょっと違う……。やわらかくて……ビクビクして」
 奥まで俺を貫いておきながら、シエルは身動きせず、一度出したことで萎えている俺のモノに手を這わす。
「んんっ! あっ……あっ、シエルっ」
「しばらくこうしてよっか……。ラウムのナカが、また俺の形になるまで……ね?」
 うまく理解できないまま、コクコク頷きシエルに同意する。
 けれども、シエルが俺の性器を指で撫でると、勝手に腰が動いてしまっていた。
「あっ……ん、んっ! シエ……ルっ。んぁっ……あんっ!」
「はぁっ……あ、ダメ、だよ……。そんな、煽られたら……ぁっ……動きたく、なっちゃう、でしょ?」
「ん……らって……あっ……ん、やうっ……」
「腰……我慢出来ない?」
「れき、なっ……。あぁあっ……れきらぃ……っ!」
「はぁ……ラウム……。そんなに俺の、好きなんだ……? かわいい。かわいいよぉ……。ごめんね。ちゃんと、動いてあげるね?」
 頷くと、シエルが勢いよく俺を貫く。
「ひぁっ!! あぁっ、あっ、んぅんんっ!」
 コツコツと、奥の気持ちイイ所を小突いて、そのたびにすぐにでも射精しそうになる。
「ぁっあっ……あっ! あぁうっ……ひゃぁあっ!」
「はぁっ……今日のラウム……なんか、すごい、いやらしい……。どうしてかなぁ……わかる?」
 どうしてこんなに、興奮しているのか。
 いつもと違うことといえば一つしかない。
「らってっ……あっ……ん、はじ、めて……あっあっ……シエル、以外のがぁっ」
「そっか。初めて……俺以外のモノ、入れちゃって。興奮したんだ?」
 いまはもう卵は抜けてしまったけれど、いまだ余韻の残る体を、シエルが突きあげる。
「あっ、あっ……あぁああっ!!」
 すぐさま、二度目の射精を迎え、身体が痙攣してしまう。
 シエルは、そんな俺をぎゅっと抱き締めてくれた。
「はぁっ……ラウム……すごい、ナカ……ぎゅってしまって……あっ……ん、待って……あっ……俺も、イきそ……んんっ」
 勝手に締めつけてしまうそこを押し開きながら、シエルのモノが抽送を繰り返す。
「あうっ……待っれ……ぇ、ひぅっ……れるっ……もれひゃ……うっ」
 イったばかりにも関わらず、腸内を掻き回され、尿意を催す。
「やら、やっ……れるっ……ぁっあっ、シエルっ……」
「ん、いいよ……かわいい……。出して。出して、いいから。ね?」
 煽るように、シエルは亀頭を指先で撫でながら、腰を動かす。
「あっ……ふぁ……ぁうっ! あっ、シエ、ルっ……ふぁああっ!!」

 シエルが、俺の中に精を放つ。
 それと同時に、俺もまた我慢出来ず、その場で失禁していた。
「はぁ……あ……ラウム……。大好き……」
 繋がったまま、ぎゅっとシエルの腕が俺の体に絡みつく。
「卵は、また後で……精液まみれのラウムの中、いれたらちょうどいいかな」
「……うん」
「じゃあそうしよう。でももう少し、このまま……ね」
 そのとき、背中に少しだけ違和感を覚えた。
 たぶん、シエルが俺の背中に歯を立てているのだろう。
 翼の付け根あたり。
 いまはもう無い悪魔の羽が生えていた所に、歯を突き立てて、溢れる血液を、味わっているに違いない。
 シエルは優しいから、痛みを感じないようにしてくれる。
 ただ、吸われる感覚だけが、俺の体に伝わって来た。
「んっ……ん、シエル……」
「はぁ……ん。ラウムも、ぁ……欲しい、よね。天使の血……」
 シエルは、自分の指先を近くに転がっていたハサミで傷つけると、俺の口元に差し出す。
 俺は溢れる血を零さないように、シエルの指をしゃぶり味わった。
「ん……ぅん……」
 舌の傷口に、シエルの血を塗り込む。
 こんなことをしたところで、おそらく俺たちの血が混ざることはない。
 けれど意味なんてものは、自分たちで見い出せばいい。
 俺たちは、お互いの血を分け合うことで、心を満たそうとしていた。