■症状A+D■【天使END後のお話】シエル×ラウム
※本編のネタバレになるような表現がございます※


「ラウム! 今日はバレンタインなんだってさ!」
「……ばれんたいん?」
「チョコかける日だって、ラグエルが教えてくれたよ! ついでにチョコもたくさんくれた!」
 チョコってのは人間界にあるお菓子のことだ。
 なかなか俺たちが手に入れられるものではない。
「食べ物だろ。かけるって何?」
「かけて食べるんじゃないかな」
「なにに?」
「……とりあえず、ラウムにかけてみる?」
 シエルはラグエルのことを信用し過ぎている。
 騙されてるんじゃないかと疑うこともあるけれど、そう言えるだけの知識が俺には無い。
「かけるのはいいけど、食べられるのは困るな」
「ラウムの細胞が俺の中に入ると思うとおいしく食べれそうなんだけど」
「まだそこまでの治癒魔法も覚えてないし。シエルが食べたら俺が不完全になるだろ」
「少しくらい欠けてても俺はラウムのこと大好きだよ。でも……そうだね。困るね」

 この学園に来てからというもの、シエルの考え方は変わった。
 肉体的に自分が傷つくことや、人を傷つけることを恐れなくなった。
 それをいまさらどうこう言うことは出来ない。
 シエルはそれが正しいと思い込んでいるし、いまさらそれが間違っていると認識してしまえば、きっと悲しむ。
 いままで何度も俺の体を切って、羽を刻んで。
 俺の肉体を傷つけたことが悪いことだと、シエルに思わせたくはない。
 だから、俺はなんとなくシエルの思うように、されるがまま。
 それでいいと思っている。
 けれども、なるべくならこれ以上、変わって欲しくはない。
 引き戻すことはしないけれど、これ以上、向こう側へ行かないように。

 ……それもずいぶん、自分勝手な考え方かもしれない。
 シエルは天使だから。
 他の天使と同じ価値観に染まっていくのを俺が止める権利なんて本当はないんだ。

「ラウム? どうしたの、ボーっとして」
「ううん。なんでもない」
「じゃあかけていい?」
「ん……」

 シエルは俺のズボンのチャックを下ろし、容赦なく俺のモノを取り出す。
 少し擦られるだけで、まるで条件反射のように俺のそこは硬くなっていった。
「はぁ……ん、そこにかけんの?」
「うん……だって、ラウムのこと齧れないならあとはここから……ラウムの細胞と一緒に……」
 傷口にチョコを塗り込まれるよりは普通かもしれない。
 そんなことを思い俺は頷く。
 ズボンと下着を引き抜くと、シエルは蕩けたチョコをゆっくりと垂らした。
「っ……ん……っ」
「熱い?」
「少し……」
「はぁ……いい匂い。早く食べたい」
「……俺のまで食べるなよ」
「わかってるよ。生殖器の再生方法なんて難しそうだし」
 その方法さえ分かれば、食べたいと言わんばかりだ。
 さすがにそれは難しいとわかってくれているらしい。
 チョコのついたそこをぬるぬると手で擦り上げてくれる。
「はぁっ……んっ……ん、シエルっ……」
「あとで、ラウムにもチョコあげるね……? 俺の精液とチョコ、混ぜて飲ませてあげる」
「……んっ……」
「あ、血の方がいい? 俺の羽根にしよっか。ラウムの羽もおっきくなるかも」
「あっ……なんでも……っ」
「俺も、ラウムのなら何が混ざってもいいよ」
 シエルはうっとりした表情で、俺のモノへと口づける。
 チョコと先走りの液を混ぜ込みながら舌で丁寧に舐め取ってくれた。
「んっ……はぁっあっ……んっ! あっ」
「気持ちいい? すごい甘いのと、ラウムの味が混ざって……おいしい」
「ぃく……っんっ! あっ……あっ、んぅんんっ!!」

 いつもと違う感触で、俺はすぐさま吐精してしまう。
 シエルは俺のを咥え込んで、喉を鳴らしそれを飲み干していく。
「ん……甘い……熱くてとろっとろで、すごい……。ラウム、口あけて」
 素直に口を開くと、シエルは少しだけ俺の頭を上へと向かせて、自分の口内に含んでいたチョコや精液や唾液を垂らした。
「ラウム。バレンタインっていいね」
「ん……別に、バレンタインの日にしか出来ないってわけでもないだろ」
「でも、こんなにたくさんのチョコ、なかなか手に入らないよ」
「じゃあ、もったいない使い方してるんじゃ……」
「かけるもんなんだから、いいよ。俺がちゃんと舐めてあげるし。……でも、次はラウムの番ね」
 そう言って、シエルは自分のモノを取り出すとチョコを絡めていく。
「ラウムも、たくさん、チョコ食べて……」
「ん……」
 俺は引き寄せられるようチョコを纏ったシエルのモノに口づけた。
 甘ったるくて、なんだか頭がぼんやりしてしまう。
 そんな俺を見てか、シエルはそっと頭を撫でてくれた。
 けれどもそこにある引っ掛かりに指があたると、俺の体は少しだけ強張る。
 小さな角は、俺が半分悪魔である証だ。
 シエルには無い、俺だけにあるもの。
「……シエル……嫌?」
 それだけで伝わったのか、シエルは俺の角をツンと突いた。
「……嫌じゃないよ。大丈夫。ラウムから全部奪おうだなんて思ってないから……」
「ん……」
「俺だってもう……全部が全部天使ってわけでもないんだよ」
 シエルは天使だ。
 いくら俺の血を飲んだって羽を食べたって、それは変わらない。
 そうは思うけれども、シエルはいつも天使であることを否定して、俺に近付こうとしてくれた。
 天使でも悪魔でもない存在に。
 俺が天使に寄って、シエルが少しだけ悪魔に寄れば、俺たち2人は一緒になれるから。
「シエル……たくさん、飲んでいい?」
「いいよ。またあとで血も交換しよう?」
「うん……」
 異常な行動かもしれないけれど、俺からこの関係を終わらせることなど出来そうもない。
 俺にはシエルが必要だから。
 ときどき、シエルに食べられるのなら本望とさえ思う。
 俺の命が尽きても、きっとシエルの中で生かしてくれるだろう。
 シエルの命が俺より先に尽きるようなことがあれば、そのときは、俺の中でシエルを生かしてあげよう。